ぬいぐるみの名前
ぬいぐるみ。ふわふわもっちりとした感触と、愛らしくユニークな姿で我々の心を癒してくれる存在である。
誰しも幼い頃にぬいぐるみを部屋に飾り、名前を付け、大切に抱き締めて眠ったことがあると言っても過言ではない。ゴメン過言だったわ。
まあ何が言いたいかというと、ぬいぐるみに愛着が湧けば名前を付けるのがセオリーである。
ぬいぐるみの名付けというのは非常に興味深い。
名付けは人によって非常にセンスが分かれる。子供にとんでもない名前を付けてキラキラネームと批判される親もいる。
そんな中、無生物であり、自分の部屋という非常に私的な領域の存在であるぬいぐるみの名前は更に自由奔放なものとなるだろう。
そこで、今日は私の所持する3体のぬいぐるみについて語ろうと思う。
私の自室に居座っているのは、本棚最上段の住民であるカラフルな芋虫のぬいぐるみ、打ち捨てられた段ボール箱の上にぐったりと座り込む大きなテディベア、ベッドの上に無造作に放り投げられた丸っこくて白っぽい猫のぬいぐるみである。
こう書くと雑に扱われていそうだが、決してそんなことはない。私は彼らに毎朝毎晩声をかけるし、定期的に手洗いもしている。不安な夜も気だるい朝も共に乗り越え、大いなる愛を持って慈しんでいるのだ。
まあ色々と述べたが、要はカラフルな虫、熊、白っぽい猫の3体が私の部屋の住民である。
私はそれらに、
「カラフル虫太郎」
「熊次郎」
「白猫三郎」
という名前を付けている。実に分かりやすく良い名前である。
太郎次郎三郎の基準は何かというと、これもまた単純明快に入手順である。
虫太郎は実は二番目なのだが、そこには海より深く山より高い事情が……ある訳ではない。一番最初の「犬太郎」を失くしてしまったため、欠番の「太郎」にカラフル虫をぶちこんだだけである。
しかし私はふと思った。これでは彼らの愛らしさと名前が釣り合っていないのではないかと。
そこでつい1週間ほど前、私は長年呼び慣れた彼らを改名することとしたのだ。
まずカラフル虫太郎。
奴はメタモン……じゃなくて。メタノール……じゃなくて。えーと…………そうだメトロンだ。
メートル法の元となったメトロンさんの名前を拝借した。芋虫だけあってなんか長いし。全長30センチメートルくらいだけど。
次に熊次郎。
エカテリーナ……じゃないな。エカテ……テリ……エカテリンだ。
これは……なんか寒そうな名前にしようとした気がする。熊だし。熊といえば北極熊である。
最後は白猫三郎。
えーーこいつは……えー…………
やはり名前というのは慣れ親しんだ名前が一番である。人間だって、よほど生活に支障が出ない限りは改名するものではない。
これからもカラフル虫太郎、熊次郎、白猫三郎と楽しく暮らそうと思う。
これを読んだ貴方も、是非自分のぬいぐるみの名前を公開してほしい。
……え?名前を付けてない?そもそもぬいぐるみなんて持ってない?
今すぐゲーセンのUFOキャッキャーに5000円ほどぶちこめ。そうして手に入った相棒に一昼夜語りかければ、気付けば貴方は発きょ……名前付きのぬいぐるみを同居人にしていることだろう。